この記事はレーベンスティールに関する考察記事です!
※この記事は2023年9月15日noteに投稿した記事をリライトしたものです
前書き
2023年5月28日に行われた今年の日本ダービーはタスティエーラの優勝で幕を閉じました。
皐月賞馬ソールオリエンスを筆頭とする同世代の有力馬を抑えての勝利であり、タスティエーラがこの世代の現状No.1であることに異論を唱え方は少ないでしょう。
そんな今年の日本ダービーの内容を時計面から振り返ったとき、私は多少の違和感を覚えました。
それは、巷でも言われている通り全体時計が遅いことが最大の要因なのですが、実は皐月賞を含む複数のダービー前哨戦を時計やラップから振り返ってみるとダービーと同じ傾向が見られました。
そんな違和感の積み重ねから私は、
「実はダービーに出ていない馬の中にさらに強い馬がいるのでは?」
という考えを抱くに至りました。
そして、その ”幻のダービー馬” とでもいうべき馬は
レーベンスティール
ではないかと考えています。
本記事では、そのように考える理由について、レーベンスティールが出走したレースを数字的に考察することで深堀していきます。
あくまで私の個人的な見解になるので、参考程度に見ていただけると幸いです(^^)
2歳新馬戦(東京芝1800m)
レーベンスティールの初陣は近年ダービー馬の登竜門となっている東京芝1800m 2歳新馬戦でした。
このレースには後に日本ダービーで1番人気となるソールオリエンスが出走しており、私の中では伝説の新馬戦だったと考えています。(これから伝説になる、という方が正しいかもしれません)
レースでは直線で2頭が抜け出し接戦となった末にソールオリエンスが首差でレーベンスティールを上回るという結果となりました。
全体時計は1:50.8と平凡なのですが、素晴らしかったのは後半5Fの数字です。このレースの後半5Fは58.2。この数字を同条件のレースと比較することでその価値が浮かび上がってきます。
以下は、2006年~2022年に2歳限定で行われた東京芝1800m戦について、後半5Fの数字が早い順番(※後半5F 58.9秒以下のみ)に並べたものです。
黄色のハイライトで示した馬は後にG1を勝った馬です。一目瞭然ですが、近代競馬の名馬たちがずらりと並んでいることがわかります。
そして、ドゥラメンテやコントレイル、イクイノックス、タスティエーラなど、ダービーで活躍した馬が多く該当するのも特徴です。
ソールオリエンスもこの条件に該当しており、その2着だったレーベンスティールもダービーを勝つだけの素質を持っているのではないかと考えるきっかけとなりました。
3歳1勝クラス(東京芝1800m)
レーベンスティールは中山での2戦を経験した後に、再び新馬戦と同じ条件の東京芝1800m戦に出走しました。
このレースでは2着に0.8秒の着差をつけて快勝。全体時計は1:47.4、上り3Fは33.0と、数字面でも大きな進歩を見せての勝利でした。
ラップからレースを振り返ると、残り3F(600m)の地点まではゆったりとしたペースで流れ、そこから急速なスピードアップが求められました。
残り3F以降のレースラップは
11.6 – 10.8 – 10.9 (レース上り3F 33.3)
という普段はお目にかかれないようなハイラップ。特に残り2Fの10秒台はかなり珍しい数字です。
実際に、2006年~現在に至るまでに開催された東京芝1800mの全レース(943レース)について、ラスト2Fのレースラップを調査して早い順に並べてみました。
すると、このレースでレーベンスティールが記録した21.7という数字は第1位の数字であることがわかりました。
前半ペースが遅くなると、その分上りの数字が早くなるため、全体時計が或る程度早い時計(1:48.0以下)に絞って上り2Fの数字が早い順番に並べたものは以下の通りです。
黄色のハイライトで示した馬がG1馬。グレーのハイライトで示した馬がG2馬です。
こちらの条件で見ても素晴らしい馬が並んでおり、その中でもレーベンスティールが記録した数字の素晴らしさが目立ちます。
これらの数字から考えると、東京でのパフォーマンスはこの世代でNo1といっても大げさではないと思います。
ラジオNIKKEI賞(福島芝1800m)
最後に、レーベンスティールにとって直近のレースであるラジオNIKKEI賞についてもふれておきたいと思います。
このレースでは外枠から枠なりに先行しようとしましたが、後の調教師コメントでもあったようにコンディションがイマイチなせいなのか行きっぷりが悪く、この馬としては珍しく後方からのレースとなりました。
ご存知の方も多いと思いますが、福島芝1800mコースは比較的直線が短く(300m以下)、コーナー半径が小さい小回りコースです。
ゆえに、上り3Fの数字が出にくく、はやい上りでの差し切りが難しいコースとなっています。このことは一般論として語られることが多いのですが、実際に私が過去データを調べている中でもその傾向は明らかでした。
今年のラジオNIKKEI賞については他の芝レースの結果から考えても前が有利になっており、後方から差すのは難しい馬場となっていました。
そんな中で、レーベンスティールは直線で最後方に近い位置から追い込み、上り3F最速34.4の脚を繰り出して3着という結果でした。
途中前の馬が壁になるような馬群の間を縫って追い込んでくる姿には目を見張るものがあり、最後に4着馬バルサムノートをはねのけてしまうほどの勢いがありました。
この内容から、多くの方がこれこそ “負けて強し” の競馬だと感じたことでしょう。
では、実際にレーベンスティールが2023年ラジオNIKKEI賞で見せたパフォーマンスがどれほど強いのかを考えるために、例のごとく数字を他の馬と比較してみます。
上り3Fに注目すると、レーベンスティールが記録した34.4という数字は、2023年の福島芝1800m以上(芝1800m, 芝2000m, 芝2600m)のレースにおける最速の数字でした。
(※50レース中、3着内に来た馬150頭が比較対象)ちなみに2位は福島牝馬Sのステラリアが出した34.5です。
続いてレーベンスティールと同じような競馬をした馬を抽出するために、以下の条件に該当する馬をピックアップしてみました。
・対象期間:2006年~2023年
・6, 7月開催の福島芝1800m数:263
・3着以内に来た馬(263レース×3頭=789頭)
・上り3F最速
・上り3F 34.4以下
・上り2位との差が0.4秒以上
少しややこしい条件で理解するのに時間がかかるかもしれませんが、
要するに “後方から1頭だけ抜けた差し脚で馬券圏内まで追い込んだ馬”
を選ぶための条件として選定しています。(6, 7月開催に限定した理由は、福島競馬場の芝コースは時期によって馬場差が大きいため、条件をできるだけ合わせて評価するためです)該当馬は以下の通りです。
対象馬789頭中で13頭が該当し、そのうち青色のハイライトで示した6頭(1頭は重複)が重賞勝ち馬です。
注目すべきは同じくラジオNIKKEI賞に出走し、後にG1を複数勝利する名馬 フィエールマンが該当していることではないかなと思います。
フィエールマンもラジオNIKKEI賞で上がり最速34.4の脚で最後方から追い込んで2着まで来ています。
通ったコースや馬場状態など様々な部分で差異はありますが、
レーベンスティールの走りは見た目にもフィエールマンを思い出すような走りでした。
フィエールマンはラジオNIKKEI賞時点では重賞すら勝ったことのない馬であり、現時点でのレーベンスティールと同じ立ち位置でした。
レーベンスティールもフィエールマンと同じように、今後G1を複数勝利するような名馬になるのではないか、と考えたくなります。
最後に
以上、私が “幻のダービー馬” だと考えているレーベンスティールについて、出走したレースを数字的に考察してきました。
過去の馬と数字的に比較してみることで、レーベンスティールがこれまで見せてきたパフォーマンスがどれほど素晴らしいかを理解していただけたのではないでしょうか。
ここまで述べてきたことは数字上の話であり、今後レーベンスティールの活躍を保証するものではありませんが、このような数字を残せるだけでも素晴らしい馬であることは間違いないと思います。
まずは直近のセントライト記念、そしてその後大きな舞台での大活躍を期待しています!
最後まで読んでいただきありがとうございました!
おず